日本法人が海外法人に株式譲渡する場合の手続き相談が増加中

10年前は、日本企業同士の株式譲渡手続きの相談が多く、日本企業が外国企業の株式の譲渡を受けたり、逆に日本企業が海外の企業に株式を譲渡するケースの相談は少なかったです。

しかし、近時は、ビジネスがグローバル化していますので、日本企業が外国企業の株式の譲渡を受けたり、逆に日本企業が海外の企業に株式を譲渡するケースが非常に多くなっています。

具体的には、このようなケースです。

日本で起業し、会社設立したベトナム人のNさんが帰化して、設立したA社(100%日本法人)の株式を51%、ベトナム法人のB社に譲渡したい。

このように、日本法人が外国会社にその保有する自社の株式を譲渡する場合の手続きについて簡単に説明します。

 

日本企業が外国企業に株式譲渡する場合の手続き・方法

 

外国人の経営者からは、「株式譲渡については、会社の登記の変更が必要ですよね?」という質問をよく受けます。

確かに、海外では、株式の所有者が登記事項となっている国があります。

しかし、日本は、株式の所有者は登記事項ではありません。そのため、会社法の規定に従って、下記の手続きを会社内で行えば完了します。

株式譲渡と同時に資本金の増資や役員の変更など、登記事項に変更がなければ、管轄の法務局に対する変更登記の必要はありません。

(一般的な株式譲渡に必要な手続き)

①臨時株主総会での株式譲渡承認決議

②株式譲渡契約(Share Assignment Agreement)の締結

③株式譲渡承認請求書(Request of Approving The Share Transfer)の譲渡人(Seller)と譲受人(Buyer)の押印・署名

④株主名簿(Share Register)の書き換え

※注:非上場会社で取締役会費設置会社の場合で、株式譲渡手続きのみを行う場合

大企業等で株主がたくさんいて、株主総会の開催が簡単ではない場合はともかく、中小企業であれば、外国会社に対し株式を譲渡し、その株式譲渡手続きを行うことは複雑な手続きではありません。

ただ、そうはいっても臨時株主総会の招集方法や議事録の作成方法、株式譲渡契約書の作成方法等、初めてであれば難しいことはたくさんあります。

また、株式を譲渡した株主個人(又は日本法人)には株式の譲渡益にかかる納税義務が当然発生します。

そして、株式を譲渡してしまった場合、後から多大な納税義務があったことに気がついても、株式譲渡をなかったことにはできません。

ですがら、外国会社に株式譲渡をする場合は譲渡益にかかる税金も事前にきちんと調べてから手続きを行わないと、後で資金繰りに困ることになることもあります。

 

株式譲受会社の株主を公的に証明する方法はあるのか

上記の通り、株主は日本の登記制度上、登記事項ではないので、日本企業から外国会社に株式を譲渡した場合でも、譲受人であるベトナム法人B社を登記して、公示することはできません。

増資をしたとしても、資本金の額は増加しますが、株主であるベトナム法人B社は登記簿上現れません。

このような場合に、ベトナムでの手続きのために、何かB社がA社の株主であることを公的に証明できる手段はないか?という相談もあります。

このような場合は、株主名簿を作成し、翻訳公証したり、税務署に提出した法人税確定申告書の「別表二」のコピーをとってCertified Copyである旨の認証や翻訳公証したり、という様々な方法で何とか信用性をつけます。

近時は、社長は中国人で、法人はケイマン島にあり、そのケイマン法人が日本に法人を作り、その株式をアメリカやドイツの法人に譲渡している、というような昔は考えられなかったような株式保有形態もあります。

今後、グローバル化により、多国籍の企業がさらに多くなってきますので、株式譲渡においても、国際法務の専門家と相談しつつすすめていくことが重要となるでしょう。

当事務所でも、外国企業との株式譲渡契約書の作成、公証やM&Aをサポートしていますので、このような問題でお困りの場合は、お気軽にご相談ください。