1.英文売買契約書とは

国際売買契約は、国際取引の中で最も多い契約であるといえるかもしれません。

そして、国際売買取引を行うにあたっての様々な条件を取り決めたものが、国際売買契約(Purchase/Sales Agreement)で契約の際には英文売買契約書を作成することが多いです。

輸出入取引は、売手(輸出者)と買手(輸入者)との間の法制度・商習慣・伝統・文化などの違いや、言語の違いによる意思疎通の難しさ、さらには船や航空機 を利用しての長距離輸送が不可欠であることなどにより、国内取引と比較すると様々なトラブルが発生することの多い、リスクの高い取引であるといえます。

その上、一度トラブルが発生してしまうと、その解決には多大な困難を伴うものであることもまた事実です。

そういったリスクをあらかじめ回避し、異なる国同士が安心して取引を行うために、輸出入取引の世界には国ごとの法制度とは別に様々な国際ルールが存在します。

もっとも基本的なものとして、売手・買手間の費用負担や危険(リスク)負担を明確にしておくためのルール(貿易条件とよばれるもの)がありますが、その他 にも、国際輸送にかかわる保険の制度や代金決済のシステムなど、長い歴史の中で形作られてきた様々な仕組みが存在するのです。

国際売買契約を締結するにあたっては、こういったルールをよく理解した上で、英文売買契約書の内容が自身の希望に沿ったものとなっているかどうかを充分に検討する必要があります。

 

2.英文売買契約書作成の際に規定しておくべき事項

英文売買契約書作成の際に取り決めておくべき内容として、もっとも基本的かつ重要なものは次のとおりです。

 

Ⅰ商品とその品質・仕様

海外取引の際は、まずは、「取引の対象となる商品は何か」を決めないといけません。

契約書では、品番・サイズ・色・素材等を明記することで商品を特定するのが一般的です。

但し、例えば「Mサイズの洋服1万枚」の「Mサイズ」とはどのようなサイズなのか、等の問題は頻繁に発生するため、あらかじめ仕様書や図面などを入手しておくことが必要です。 さらに可能であれば、見本、サンプルの提供を受けておくことをおすすめします。

Ⅱ売買価格

売買価格は商品の値段を決めればいいとお考えの方も多いですが、実際はそうではありません。売主が提示する売買価格には、商品の価格そのものだけでなく、輸出入手続にかかわる様々な費用(国際運賃、国内運賃、通関手数料、梱包費用、保険料、倉庫費用、税金など)が含まれている場合があります。 売買価格にこういった諸費用を含めるかどうか、言い換えれば諸費用をどちらが分担するかについては、あらかじめ契約交渉の中で明確に取り決めておかなければ、後々の紛争のもととなってしまいます。

この費用負担に関する条件のほか、双方の危険負担の範囲や商品引渡しについての条件を総合的に貿易条件とよびます。 但し、こういった貿易条件を一からすべて書き出していると、漏れや誤解が生じるおそれがありますし、非常に煩雑です。そこで、通常は国際規則を利用します。これをインコタームズ(International commercial terms)とよびます。

インコタームズは1936年に国際商業会議所により定められた国際ルールで、その後数度にわたって改訂され、現在、世界的に認知され採用されています。
インコタームズ2010年版(現状最新のもの)では、貿易条件を定義するための13種類の類型が定められており、このうちひとつを契約に明記することで、出荷・費用負担・引渡しなどに関する売手・買手双方の義務を明確にすることができます。

Ⅲ決済通貨

日本の企業にとっては、外貨建て決済の場合には為替変動のリスクが生じるため、可能であれば日本円建てでの決済が望ましいことが多いです。 ただしこれは相手方にとっても同様のため、話し合いにより決定することになります。 また、米ドルやユーロなど、安定した第三国の通貨を採用する選択肢もあります。

Ⅳ数量

商品の仕様やサイズごとに、それぞれの数量を明確に特定します。 そうでないと、「赤を100個、青を100個、白を100個」発注したつもりでいても、「とりあえず今在庫のある色で合計300個」出荷してくる・・・といったケースも珍しくないからです。
また、工業製品など個数で特定できるものであれば問題ありませんが、体積や重量などで特定する場合には、使用される単位に注意します。例えばポンドとグラムでは量は相当違います。

Ⅴ梱包方法

ここは忘れがちなところですが、商品の特性に合い、長距離輸送に適する梱包方法をあらかじめ取り決めておきます。
例えば、天然素材を用いた梱包(ワラの緩衝材や木箱など)の場合、検疫を受けなければ輸入通関ができない場合があるため、注意が必要です。

Ⅵ代金決済

例えば、国内の取引であれば、双方の企業がそれぞれ現金と商品を持参してその場で引き換える方法を採ることも可能ですが、国際取引ではこれは現実的ではありません。

そこで、どのような代金決済方法を行うのかが問題になります。

輸出入取引で用いられる主な代金決済方法には、主として2つあり、銀行送金、信用状(L/C)があります。 また決済の時期により、前払いと後払いに分けられます。
前払いとは、商品の出荷前に代金を決済する方法です。 売手にとっては安心できる方法ですが、買手にとっては商品が手元に届く前に支払を行わなければならず、リスクの高いやり方です。
逆に、後払いは買手にとっては安心で有利な方法ですが、売手には代金回収のリスクが発生します。

なので、結局は双方の妥協点を見つけるしかなく、両者の力関係や交渉のうまさ等に左右される面もあります。

 

Ⅶ出荷及び引渡しの方法

商品の売手から買手への引渡しがいつ、どこで、どのように行われるかは、双方が特に注意を払わなければならない重要なポイントです。 輸出入取引の場合、船や航空機を利用した輸送が必要となるため、輸送手段や委託する輸送会社についても取決めが必要です。
但し、引渡しの条件については、前述のインコタームズに定義された条件を利用することで、明確に定めることができますので、インコタームズの内容をしっかり理解することが重要です。
さらに細かいことをいうのであれば、輸送途上での商品の積替や分割出荷が認められるかどうかについても、あらかじめ取り決めておく必要があります。

Ⅷ保険

ここでいう保険とは、輸送途上での事故による損害をカバーするための保険を指します。
保険手配を売手・買手のどちらが行うかについても、前述のインコタームズに定義された13種類の条件のうちいずれを選ぶかにより、規定することが可能ですので、出荷や引渡しの条件とともに保険についても同時に記載するようにしてください。
なお、当事務所では英文売買契約書の翻訳・作成を承っておりますので、英文売買契約書の翻訳・作成でお困りの際は、お気軽にご相談ください。

 

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